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日々巡らす思索の結果をブログという形式に昇華した事によってインターネット上に常駐し始めた、日付順に並ぶ一連の文章群。人工衛星の様に電子の海に浮かぶそれは筆者の頭中世界を大いに反映する。
Posted by - 2024.04.28,Sun
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Posted by 雪花美鴎 - 2011.05.08,Sun
  先月、東京国立近代美術館に行った。物凄い暴風雨であった。ビル風と合わさり、強烈な力となって向かい来る風に耐えながら、傘を盾に、戦地に赴く兵士の様な心持ちで、憤然、岡本太郎の絵画を見んと、黒色の布地に覆い隠された、不可視の道を歩んだ。入った際、まず驚いたのは人の多さである。ひしめき合って、一歩進む度、誰かの肩とぶつからなければ、通過出来ない程であった。一種、美術館と混雑という、通常、同時存在はしない事象の共存になにやら、訳の分からぬ異常を感じた。近年、岡本太郎は若者に人気がある、と言われているが、その為かもしれない。
 展覧会場に入ると、通路の両側に陳列された奇怪なオブジェの群に迎えられる。薄暗い部屋で、土台からのか細い照明によって、浮かび上がる、一見すると、愛嬌のある、子供向けアニメーションのキャラクターに似たものが並んでいた。しかし、すぐさまその印象は払拭される。これは、可愛らしいものではない。不気味な空虚。穴で出来た大きな、口程もある目からは、無感情という感情が流れ出ていた。嬉しそうにはしゃいで、走り回る子供が時折見せる圧倒的な無表情。遊びに飽きたなどという心情の表明ではなく、自身の虚無を映し出す、何にも染まらない、真っ白で病的な表情。「トラウマになりそう」そのような呟きが何処からか聞こえてきた。確かに、悪夢に出てきそうである。その様な気味の悪いものを前にした時、人は目を背けたくなるのが普通である。だが、彼の作品にはずっと見ていたく思わせられる何かがある。怖いもの見たさであろうか。いや、そうではない。滑稽さというものもある。こっちまで笑いだしてしまいそうな。そして何よりも、それ程に強い、目に蒸着して離れない、インパクトがある。それは岡本太郎特有の不思議なものだ。
 次の部屋には彼の初期の作品が展示されていた。『痛ましき腕』が印象的であった。光源に当てられ強調された腕からは皮膚がスプライト状に切り取られ、露わになった毒々しいピンク色の肉に血が滲み出ている。腕の痛みを必死に堪えているのか、前面に拳を付き出し強く握り締めている。表情は、日陰で異常成長した巨大な花の様に頭に咲いたリボンによって陰鬱に隠されていて、伺い知る事は出来ない。ひょっとしたら、笑っているのかもしれない。狂気の笑み、嗤い。常軌の逸脱の果てに訪れる、感覚を超えた快楽、絶頂。感覚は許容量を超過すると溢れ出し、新たなものへ昇華し、ハイになるという。彼は、私の想像では捉えられないものを味わっているのであろうか。だが、それが全体として何を表しているのか、私には分からない。理解出来なかった。その絵は解釈を、強烈な呪術の様ですらある思念を以て拒絶する。しかし、そもそも意味などないのかもしれない。その点入り口の無い建造物にも似ている。
 
 この小篇はこの後延々と順番に、私が感銘を受けた作品について綴っていく予定であったのであるが、それが不可能であることがここまで書いている内に次第に露呈した。見てから大分時が経ってしまった為、その時の思考や感情を余り覚えていないのである。パンフレットを見ながら、無理矢理に文章を捻り絞り、書くことは可能であろうが、それは非常に苦しい作業である。そして何より、頗るつまらない。意味のある行いだとも到底思えない。したがって、ここで中断することにした。その時の新鮮な感情が、凍りついた雪巌を砕き、激流となって流れる様に、今を破り現出するようになった暁には再開し、この続きを綴っていこうと思う。

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